イチから知りたい計画修繕
「基本のキ」編

多くの方がともに暮らすマンションでは、安全で快適な住まいを守り、資産価値の維持・向上をしていくために計画的な修繕が欠かせません。
でも「計画修繕」と聞くと、何だか難しそうですよね。
今回はマンション共用部分の計画修繕について、基礎知識から資金の考え方まで、基本的なポイントを解説します。
※2025年12月現在
計画修繕は「平穏な日常を
ずっと続けていく」ためのもの
「計画修繕」とは建物を維持するために、あらかじめ内容と時期を決めるなど、計画的に実施が必要な工事のことです。そしてその工事をいつどんなタイミングで行うかを長期的な視点で計画することを「長期修繕計画」といいます。
例えば、ある日突然マンションのエレベーターが動かなくなったら生活はどうなるでしょうか?
マンションは一戸建住宅と比較し、エレベーターや給水設備など、さまざまな諸設備が設置されているため、修繕費用が多くかかります。
さらに合意形成も必要になることから、不具合が発生してもすぐに対処できるとは限りません。計画修繕には「安全性の担保」や「資産価値の維持向上」といった大命題もありますが、日々の生活を守るためにも必要不可欠なのです。
また、修繕は計画性をもって臨むことで、単に壊れた部分を直すだけでなく、快適さや利便性を高めるチャンスにもなり得ます。予防保全を念頭に修繕の内容や時期を検討するという、長期的な視点をもつことが大切です。
よく聞かれるのは「大規模修繕工事とはどう違うの?」ということですが、大規模修繕工事はあくまで計画修繕のうちのひとつ。計画修繕のなかでも特に大がかりな工事で、足場を組んで行う外壁の修繕や屋上防水など、主にマンションの外回りを整える工事を指しています。
「大規模修繕工事さえ終われば大丈夫」ということではありませんので注意が必要です。
修繕の正しいタイミングとは
長期修繕計画は具体的にどのように立てられているのでしょうか。次の<表A>は、一般的なマンションの長期修繕計画です。
大規模修繕工事が12年周期で実施され、その前後で設備の耐用年数などに合わせたさまざまな工事が計画されています。
<表A>のなかに4~6年周期で出てくる「鉄部塗装」は、手すりや非常階段、メーターボックスの扉などが鉄製の場合に必要になる、防錆・美観回復のための塗装です。
マンションが建てられた年代や使われている素材、仕様、立地条件、使用状況などによっても修繕の内容や時期は異なるため、この機会にお住まいのマンションの長期修繕計画を確認してみてください。
設備工事も計画修繕の一部
<表A>にあるように、計画修繕にはマンションの建物本体だけでなく「設備工事」も含まれます。
それぞれ実施時期はバラバラですが、築15年以降はこうした設備の修繕も検討していく必要があります。項目が多く大変ですが、なかにはライフラインや命を守ることにつながる箇所もあり欠かせない修繕です。
どうする?
計画修繕工事の資金調達
計画修繕工事の費用は、区分所有者さまが毎月積み立てている修繕積立金から支出され、積立金不足に悩む管理組合さまも少なくありません。
このような場合にはマンションの劣化状況を把握して優先順位を判断できる会社に相談しながら、現実的な工事の時期や内容を再設定する必要があります。それでも修繕積立金が不足する場合には、区分所有者さまから修繕積立金とは別に一時金を徴収するか、管理組合さまで銀行から借入をして工事を実施することになります。一時金の徴収のハードルは高く、現実的には借入を選択することが多いようです。
注意したいのは、返済期間中は追加の融資が難しくなることです。例えば大規模修繕工事を借入で実施することで、先々に予定されている設備工事の実施ができなくなる可能性があるのです。

エレベーター改修のための追加借入ができず、工事ができない可能性がある
上記のケースでは工事ができない間にエレベーターに不具合が発生することも考えられます。
こうしたトラブルを避けるために、借入で工事を行う場合には大規模修繕工事と設備工事の同時実施により2種類以上の工事を合わせた借入を行うことも選択肢のひとつとして考えることが可能です。
このように同時実施には借入以外のメリットも多く、「修繕積立金が足りなくて設備工事を諦めていた」という管理組合さまにも有効な手段です。
ただし、金融機関ごとに条件が異なるため、事前に管理会社に相談しておきましょう。
長期修繕計画の見直しで
マンションの資産価値を守る
長期修繕計画は竣工時には販売会社や管理会社が作成していますが、以降は5年ごとに管理組合さまが更新する必要があります。これは物価や工事費の変化、建物の劣化、新技術の登場などに対応するためです。また建物の状態によっては5年に限らず見直しが必要になることもあります。
近年注目されている「マンション管理適正評価制度」では、修繕履歴や積立金の状況なども評価対象になっており、計画修繕のあり方がより一層資産価値に直結する時代になっています。
※マンション管理適正評価制度について詳しく知りたい方はコチラの記事をご覧ください。
計画修繕は自分たちの暮らしや資産を守るために行うものです。ぜひ自分ごととして考え、日々の安心を守り、資産価値を高めていきましょう。
「イチから知りたい計画修繕」シリーズでは「給排水工事」編も公開中です。ぜひご覧ください。

