イチから知りたい計画修繕
「給排水管工事」編

マンション共用部分の計画修繕について解説するシリーズ。今回は私たちの生活に欠かせない「水の通り道」である給水管と排水管について、劣化のサインや修繕工事の方法、実施時期の目安などをやさしく解説します。
工事を検討するタイミングは一般的に築20年と築30~35年ごろが目安です。築年数の近い方や、「最近水の流れが悪い」「水道の水が赤い気がする」など、気になる症状がある方はぜひ参考にしてみてください。
※2025年12月現在
給排水管は暮らしを支える
大切な設備
普段は目にすることのない給排水管ですが、じつはマンションの命綱ともいえる大切な設備です。けれども見えない場所にあることから劣化に気づきにくく、計画修繕でも後回しにされてしまいがちです。
もし改修をしないまま放置すると、次のようなトラブルが起こることがあります。
- 錆によって水が赤く濁る「赤水(あかみず)」が発生
- 腐食が進み、漏水のリスクが高まる
- 排水管に汚れが堆積し、悪臭や詰まり、逆流が発生
ただし、こうした劣化は給排水管に使われている材質によっても変わります。
給排水管には大きく分けて金属製と合成樹脂製があり、昔は鉄管が主流でしたが、現在は錆びにくく耐震性にも優れた合成樹脂製が多く使われています。
工事のタイミングと
ふたつの工法
給排水管の改修時期は一般的に築20年~35年が目安になります。ずいぶん幅がありますが、これは選ぶ工法によって時期が異なるためです。
工法は2種類あります。それぞれ特徴があるので、劣化状況や資金状況に合わせて検討するとよいでしょう。
築20年で給排水管の更生工事を行った後、築30年に排水管、築35年に給水管の更新工事を行うというのが基本的なプランです。ただし、給排水管の材質の向上による耐用年数の長期化もあり、使用状況によっては更新工事のみを行うケースもあります。
また、こうした実施時期の目安とは関係なく、普段の生活のなかでサインが出ることも。「赤水が出る」「キッチン、浴室、トイレなどの排水の流れが悪い」「断水復旧後に水の出が弱い住戸がある」「最近漏水した住戸があった」といった症状が出てきたら黄色信号かもしれません。大きなトラブルが発生する前に検討を開始しましょう。
まずは調査診断で
「今の状態」を確認
給排水管は、材質や工法、使用状況によっても実施すべき時期が異なります。そこで最終的な実施の判断をするために行いたいのが調査診断です。
調査診断では給水管は水道メーター周辺にある配管を一部抜管した箇所から、排水管では専有部分内のキッチン下などから、それぞれ内視鏡を使って内部の様子を確認します。

こちらは給水管を内視鏡で見た様子です。錆コブができ、かなり閉塞しているのがわかります。この状態であれば早めの改修が必要になります。調査診断は有料ですが、見えない部分だからこそ早めの確認が安心につながります。
専有部分の給排水管は
個人の管理が必要
ここまで共用部分について解説してきましたが、専有部分の給排水管は区分所有者さま個人の管理責任となります。必要に応じて個別に修繕を行いましょう。
ただし、管理規約を変更することで、共用部分と専有部分をまとめて工事するケースもあります。
近年は物価高の影響で工事費が上昇し、当初想定していた予算内での工事が難しくなるケースも増えています。
トラブルが起こる前に、早めの調査と計画的な検討を始めることが大切です。
今回ご紹介しました給排水管の計画修繕について、「もっとくわしく話を聞きたい」「疑問や質問があるので聞いてみたい」という方もいらっしゃると思います。
大京アステージ・穴吹コミュニティのマンションアドバイザーがご対応しますので、お気軽にお問い合わせください。
「イチから知りたい計画修繕」シリーズでは「基本のキ」編も公開中です。ぜひご覧ください。

